
近年、M&Aの件数は増加傾向にあります。その背景には、中小企業における後継者問題、事業規模の拡大、新たな市場への参入など、様々な要因が考えられます。そのなかでM&Aを検討される際には、自社の業界におけるM&Aの動向について把握しておくことが大切といえるでしょう。
この記事では、M&A業界全体の動向について詳しく紹介します。また、製造業界やIT業界などの業界のM&Aの動向も解説するため、自社の業界のM&Aについて関心をお持ちの方は、ぜひご一読ください。
1. 【M&A業界の動向】M&Aの実施件数が増加している
近年、M&Aを実施する企業が増加傾向にあり、特にここ数年での実施件数が増えている状況です。M&Aは、後継者問題の解消や事業規模の拡大、新たな市場への参入など、様々な目的で活用されています。
2025年版の中小企業白書では、2024年に4,700件のM&Aが実施されたというデータが掲載されています。
M&Aは、国内の企業同士で実施する「IN-IN」、国内企業が海外企業を買収する「IN-OUT」、海外企業が国内企業を買収する「OUT-IN」の大きく3種類に分けられます。このうち、特に増加 傾向にあるのはIN-INとIN-OUTです。
2. M&Aの実施件数が増加している4つの理由
ここでは、M&Aが活発に行われている主な4つの理由について解説します。
2-1. 後継者不足の課題をかかえている企業が増加傾向にあるため
近年では、日本の少子高齢化の影響により、後継者不在の問題をかかえる企業が増加している傾向にあります。中小企業のなかには、経営者の高齢化に直面しており、後継者の確保が困難な状況が多く見られるようになりました。
中小企業庁の「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」によると、2025年までに70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人に達するといわれており、そのうちの約半数(127万人)が後継者不在となる見込みがあるとのことです。
※参考:中小企業庁│中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題
第三者への事業承継を通じて会社を存続させるM&Aは、こうした企業にとって有効な選択肢の1つです。高齢化が進むことが予測される日本では、後継者不足の課題を解決するためのM&Aは増えていく可能性があると考えられます。
2-2. 海外市場に参入する大手企業が増えたため
近年では、海外市場への参入を目的としたクロスボーダーM&A(海外企業とのM&A)を実施する大手企業も増加傾向にあるとされています。
その理由として挙げられるのが「国内市場の縮小」です。国内人口の減少に伴い、国内市場の縮小が懸念されています。将来的に国内市場の縮小が続くと予測した企業が、海外市場に参入する動きが目立っています。
特に、市場の拡大が見込める新興国の企業を買収する動きが増加傾向にあるといえます。すでにその国で事業を展開している企業を買収することで、技術やノウハウ、人材などを一度に獲得できるため、海外市場へのスムーズな進出や事業拡大が期待できます。
今後も国内人口の減少が進むと予測される日本において、海外企業とのM&Aは増えていく可能性が考えられます。
2-3. M&A仲介業者や公的機関によるサポートが充実したため
M&Aを実施する企業が増えた背景には、M&A仲介会社や公的機関による専門的なサポート体制が整えられたことも挙げられます。
2024年11月時点でM&A支援機関に登録している数は2,800以上あり、このうちM&Aの仲介を専門とする業者は600以上登録されています。また、47都道府県(48か所)に設置された公的相談窓口の「事業承継・引継ぎ支援センター」における2024年度の第三者承継の成約件数は、2,132件で過去最高を更新したという発表がされています。
このように、M&Aを検討する企業への支援体制が拡充されたことで、M&Aがより身近な選択肢となったことも、M&Aが増えた理由の1つといえるでしょう。
2-4. M&Aの認知度が向上し譲受企業・譲渡企業のニーズが拡大したため
「M&Aによる事業承継」という選択肢を知らなかったという経営者の方にも、近年M&Aに関する認知度が高まってきたとされています。
かつては、M&Aによる事業承継の方法を知っていたとしても、「第三者への会社売却は恥ずべきこと」や「周りの人に何といわれるかわからないため、躊躇してしまう」といったネガティブなイメージを持つ方も多くいらっしゃいました。しかし、昨今、M&Aを推進するといった国の動きもあり、課題解決における有効な手段として、また、中小企業でも実施可能な選択肢としてM&Aは認知されるようになってきています。
3. 業界別のM&Aの動向を解説!
M&Aは、様々な業界で頻繁に実施されています。M&Aを検討されている方にとって、自社の業界におけるM&Aの動向について気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここからは、業界別のM&Aの動向について解説していきます。
3-1. 製造業界におけるM&Aの動向
製造業界では、事業承継や業務の効率化、販路拡大を目的としたM&Aが目立っています。具体的には、以下のようなM&Aが多く見られています。
・後継者問題を解決するためのM&A
・DX(デジタルトランスフォーメーション)化を推進するためのM&A
・大手企業が中小企業を買収するM&A
製造業においても後継者が見つからない中小企業は少なくありません。そのため、後継者問題を解決する目的でM&Aを実施する企業が増えている傾向にあります。後継者問題の解決により、企業が存続できるだけでなく、従業員の雇用を継続できるというメリットもあります。
また、データやデジタル技術を活用して業務の効率化を図るDX化を推進するために、IT関連企業とのM&Aを実施する企業も出てきた状況です。IT人材を確保することで、自社のみでは困難であったDX化の推進をスムーズに進められることが期待できます。
さらに、大手企業が自社のグループ内で一貫した製造体制を構築するため、部品メーカーなど特定の技術を持つ中小企業を買収する動きも見られます。売却する中小企業側としては、大手企業の傘下に入ることで、経営基盤の安定化を図れるというメリットがあるでしょう。
3-2. 卸・小売業界におけるM&Aの動向
卸・小売業界においても、M&Aが活発に行われています。卸・小売業界では、以下のようなM&Aが多く見られます。
・後継者問題を解決するためのM&A
・シナジー効果(相乗効果)を発揮するためのM&A
卸売りや小売りといったビジネスモデルは、M&Aによるシナジー効果を発揮しやすいといえます。例えば、同業者同士でM&Aを実施すれば、商品をまとめて大量に仕入れることで、仕入や物流のコスト削減につながる可能性があります。さらに、譲渡・譲受企業がそれぞれの顧客に対し、互いの商品を販売することで、売上高の向上も期待できるでしょう。
3-3. 建設業界のM&Aの動向
建設業界においても、以下のようなM&Aが多く見られます。
・後継者問題や人材不足を解消するためのM&A
・シナジー効果を発揮するためのM&A
建設業界は、高齢化による後継者問題や人材不足などの影響を特に受けている業界の1つです。厚生労働省の「建設業就業者の年齢構成」によると、2016年時点の建設業就業者の平均年齢は44.2歳でした。
このデータは、建設業界の高齢化が進み、若手人材を確保できていないことが後継者不在や人材不足につながっている可能性を示唆していると考えられます。こうした課題を解決するために、M&Aを実施する企業が増加傾向にあるという状況です。
近年では大手ハウスメーカーや不動産会社などの異業種・関連業種による、建設業界の企業を買収する動きも目立っています。建設業の企業が大手企業のグループ会社となることで、事業の安定化や新たな販路の開拓など、シナジー効果を発揮できる機会が生まれるでしょう。
3-4. IT業界のM&Aの動向
IT業界においてもM&Aは活発化している状況です。具体的には以下のようなM&Aが活発化しています。
・人材を確保するためのM&A
・DX化を推進するためのM&A
IT業界は、慢性的な人材不足が課題となっています。新たな人材を採用したとしても、スキルを習得させるためには研修や教育に時間を要する場合があります。そのため、即戦力となる人材を確保する目的でM&Aを実施する企業が増加しています。
また先述した通り、近年では様々な業界においてDX化が推進されていますが、IT以外の異なる業界が、自社だけでこれに対応することは容易ではありません。こうした背景から、近年ではDXを導入する目的で、IT業界と異業種間でのM&Aが見られます。
DX化が推されている一方で、実際にDXを導入している企業は多くないと見られており、今後も異業種とのM&Aは増える可能性があるとされています。
3-5. 物流業界におけるM&Aの動向
ネットショップやネットオークションなどのEC(電子商取引)市場の拡大に伴い、物流業界では、これに対応するためのM&Aを実施する企業が見られます。具体的には、以下のようなM&Aです。
・後継者問題や人材不足を解消するためのM&A
・DX化を推進するためのM&A
・事業を成長させるためのM&A
物流業界は、EC市場の拡大に伴い業界の需要が高まっている一方で、後継者不在や人材不足などの課題も抱えています。これらの課題を解決するためにM&Aを実施する企業が目立つ状況です。
他の業界と同様に物流業界でもDXを導入するために、すでにノウハウを持つ大手物流企業の傘下に入る動きも見られます。大手物流企業の傘下に入ることで、DX化の推進だけでなく、経営基盤の強化にもつながる可能性があるでしょう。
さらに、規模の拡大や冷凍・冷蔵・保存など自社にないノウハウの獲得、そして新たな拠点の増設といった成長戦略の一環としてM&Aを実施するケースも多く見られます。
3-6. 不動産業界におけるM&Aの動向
不動産業界では、以下のような目的でM&Aが実施されています。
・後継者問題を解消するためのM&A
・シナジー効果を発揮するためのM&A
不動産業界においても、後継者不在の課題は深刻化しています。そのため、M&Aにより第三者へ事業承継を行う動きが高まっています。
また、不動産業界は関連業種とのM&Aによってシナジー効果を発揮しやすく、これを目的としたM&Aを実施する企業も多いです。不動産業界の事業は、土地売買業や不動産仲介業、土地賃貸業など、様々な分野に細分化されています。
このように細分化された事業は、1つの不動産取引の中で密接に関わり合っています。そのため、M&Aによって複数の事業を自社グループ内で一貫して手掛けることができれば、より大きなシナジー効果を発揮できる可能性が高まります。
3-7. 食品業界におけるM&Aの動向
食品業界においては、以下のようなM&Aが増えています。
・多角化を目指すためのM&A
・異業種から食品業界に参入するためのM&A
食品業界の商品は、大きく「素材型」と「加工型」の2種類に分けられます。素材型とは、製糖、製油、製粉など、加工メーカーや外食産業に原料を供給する商品のことです。一方、加工型とは、パン、お菓子、調味料などの原料を仕入れて加工し、家庭に供給する商品のことを指します。
多角化を目指すM&Aは、主に素材型の商品を製造する企業に見られます。素材型の商品は、競合との差別化が難しい場合があるため、M&AをDX通じて商品の種類を増やし、スケールメリットを得ようとする企業が目立つ状況です。
また、食品業界の需要の拡大を見込んで、異業種から参入する企業も増えています。特に、近年では、健康意識の高まりからサプリメントなどの健康食品の需要が高く、健康食品を製造している企業の買収が見られます。
4. まとめ
近年、高齢化による後継者不在の解消、事業規模の拡大、新たな市場への参入などを背景に、M&A市場は拡大傾向にあります。特に特定の業界では、後継者不在の課題が深刻化しており、M&Aの需要が高まっている状況です。ほかにも、製造業界や物流業界では、化の推進に向けて、IT関連企業とのM&Aが目立っています。
リンクタイズワークスは、製造業界やIT業界をはじめ、様々な業界でのM&A支援に携わってまいりました。これまでの実績をもとに、各業界特有の課題解決をサポートいたします。M&Aを検討されている方は、ぜひ一度リンクタイズワークスにご相談ください。


