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譲渡企業:オリエンタル技術開発株式会社 |
譲受企業:T社 |
栃木県庁の公務員として社会人のスタートを切った安田氏。家族の反対を押し切って独立し、1年で栃木県トップの建設コンサルタント会社へ。その後、土木設計を軸に不動産、温泉施設など複数事業を展開し、気がつけば創業53年、事業全体で社員100名を超える規模の会社へと成長させてきました。
そんな安田氏が83歳でM&Aという決断を下した。背景にあったのは、有資格者の高齢化という業界特有の深刻な課題だった。「このままでは従業員に申し訳ない」その一心で踏み出した一歩と、M&Aを経て何が変わったのか。安田氏本人に伺いました。
目次
1. 公務員を捨て、妻の反対を押し切って起業した
安田氏:もともとは栃木県庁に勤める公務員でした。しかし、同じような境遇の人たちが何かに挑戦し、成功しているのを見て、「自分も何か新しいことに挑戦したい」「自分にもできるはずだ」という思いが湧いてきました。そこで大学で学んだ土木工学の知識を活かして独立を決意したんです。
しかし、妻に告げたとき返ってきたのは「辞めてどうやってこれからごはん食べていくの?」という猛反対でした。私は自分の決意を率直に、誠実に伝え続けました。「正々堂々と生きる」それが私が若い頃から己に課してきた信条です。
結果、1年で栃木県トップの建設コンサルタントになりました。私は常に、着飾ったり背伸びすることもなくありのままでお客さんと向き合うことをモットーにやってきました。以来、土木設計を核に不動産、温泉施設、ゴルフ場運営など次々と事業を広げ、今となっては事業全体で100名規模の会社へと育ちました。
どんなときも素直にお客さんと向き合い、賃金をしっかり払って良い人材を集めることが大切だと思っています。これまで失敗したと感じたことはほぼなく、手がけたものは常にうまくいったという自負もあります。
2. 有資格者がいなくなれば、会社の立場が変わってしまう
事業は順調に拡大していましたが、数年前からふと会社の将来について考えるようになっていました。
建設コンサルタントの業界は、「有資格者がいるかどうか」で会社の立場が根本から変わる業界です。有資格者がいれば、官公庁から設計や調査を元請けとして直接受注できますが、有資格者がいなくなれば、元請けから仕事をもらう下請けとしての立場に変わってしまう可能性があります。
仕事の内容だけでなく、お客さんとの関係性も、会社としての信頼も、すべてが変わってしまいます。
私のもとで長年会社を支えてきた有資格者たちも、気づけばみな高齢になっていました。役員も同様で、後継者となる人材も見当たらず、10年先、20年先を想像したとき、「このまま時間が経てば、会社の看板そのものが変わってしまう」という危機感が現実味を帯びて迫ってきていました。
建設コンサルタントとして53年間積み上げてきた技術力も、お客さんからの信頼も、有資格者なしには維持できません。そしてその有資格者は、資格を取るだけでも相当な時間と努力が必要であり、一朝一夕で補充できるものではないので時間は確実に失われていく一方でした。
自分がゼロから築いてきた会社を、下請けとしての仕事しかできない状態で終わらせるわけにはいかないと思いましたし、何より長年一緒にやってきた従業員たちに申し訳が立たないと感じ、M&Aという選択肢が頭に浮かんできたのが始まりでした。
3. 10社以上と会ったが、しつこい仲介会社はすぐに断った
M&Aを検討し始める前から、常に10社以上の仲介会社から連絡が来ていました。電話に出て話を聞くこともありましたが、具体的な提案もなくただしつこく連絡してくる仲介会社は断っていました。中にはこちらの意向を十分に聞かないまま、強引に候補先と引き合わせようとする会社もありました。50年以上経営をしてきたら、少し話せばその人が信頼できるかどうかは伝わってくるものです。
最終的にリンクタイズワークスの岩間さんと塙さんに任せることを決めたのは、「ちょうどいい距離感」と「誠実さ」を感じたからです。「正々堂々としていて、隠し事がないこと」も決め手でした。業界の慣行や留意点、自社の弱みについても包み隠さず話してくれました。会社の数字や財務だけで安易に値付けをするのではなく、中身まで踏み込んで価値を見出してくれたと思っています。
特に印象的だったのは、お相手探しに入る前のヒアリングでした。岩間さんと塙さんは、自社に足りていない部分は何か、どんな相手と組むことが最適かを事細かに聞き取ってくれました。その上で出てきた提案だったからこそ、納得感がありました。そこからだんだんと本気で自分の会社を理解しようとしている姿勢も伝わってきました。
4. 桜の下で迎えた節目
基本合意書を締結したのは、ちょうど桜が咲いている時期でした。
基本合意に向けた買収監査(DD)の対応において岩間さんと塙さんは、経理のメンバーそして社長とも連携を取りながら資料準備を進めてくれました。私は会長として大局を見守る立場でしたが、現場のオペレーションは安心して任せられましたね。
基本合意書の締結を終えた後は、近くに桜の名所があったので、私が車を運転して岩間さんと塙さんの3人でその桜を見に行ったんです。特別なことをしたわけじゃないけれど、大きな節目を信頼できる人たちと一緒に迎えられた、その感覚は今も忘れられないです。
5. 従業員の未来を守り、新しい自分の時間
M&Aが成約し、会社はT社のグループとなりました。有資格者の問題は解消され、従業員がこの先も安心して働ける環境が整ったと感じています。それが何より嬉しいです。
個人的には財務面での重荷も減り、時間の余裕も生まれました。家族と海外旅行に行くこともできました。そして、ずっとやりたかった執筆活動にも本格的に取り組む時間を確保できるようになりました。現在は黒田官兵衛をテーマにした8冊目の本を執筆中です。また、83歳になっても英語学習のアプリを毎日続け、「学び続けることが大切」という姿勢は変わらずに持ち続けるようにしています。
M&Aという決断も、振り返れば自分の人生の中でまた一つの学びでした。このご縁をいただけたことに、心から感謝しております。
担当コンサルタント 岩間・塙から一言
この度はご成約おめでとうございます。安田会長とは約1年にわたりご一緒させていただきましたが、83歳になられてもなお学び続け、新しい挑戦を続けるお姿に、私たちも多くの刺激をいただきました。
今回のM&Aでは、後継者問題だけでなく、人材面や事業成長といった課題も含めて解決できるお相手とのご縁をお繋ぎすることができ、大変嬉しく思っております。
基本合意後にご一緒した桜の景色も、私にとって忘れられない思い出です。
長年築き上げてこられた会社の大切な節目に立ち会わせていただけたことに心より感謝申し上げます。
今後も安田会長らしく新たな挑戦を続けられること、そして両社がさらなる発展を遂げられることを心より願っております。

